このコーナーでは、既に賃貸住宅の経営をされているオーナー様や、新たに経営をご検討中の方などが抱いている経営に関する税金に関する質問や、素朴な疑問などにお答えいたします。
今後もこのコーナーではお客様から寄せられる様々な質問を紹介して行きます。


Q.アパートを建築・購入するとかかる税金にはどんなものがありますか?

A.購入時(印紙税、登録免許税、不動産取得税)も、所有時(固定資産税、都市計画税)も、基本的に、マイホームを建築・購入するとかかる税金と同じです。
ただし、特例措置があります。

•不動産取得税の特例 一戸あたりの床面積が40m2以上240m2以下の新築アパートは評価額から一戸につき1200万円控除される。 軽減措置を受けるには、「不動産取得税課税標準の特例適用申請書(家屋)」を取得後、60日以内に都道府県税事務所へ提出する。 土地を同時に取得した場合も、同じように特例措置がある。

消費税に関して、事業者免税点制度、簡易課税制度の見直しが行われました。
消費税の還付のため、一時的に課税業者になってもメリットは少なくなりましたので注意してください。
不動産取得税や、印紙税、登録免許税、固定資産税は、租税公課として、確定申告で認められる必要経費となります。

Q.土地を購入・所有するとかかる税金には どんなものがありますか?

A.土地の購入・所有時は、建物との違いとして、消費税がかからないという点があげられます。 土地を購入するときにかかる税金には以下のようなものがあります。

•印紙税(国税) •登録免許税(国税)
平成23年4月1日〜平成24年3月31日まで: 1.3%
平成24年4月1日〜平成25年3月31日まで: 1.5%

•不動産取得税(地方税)
土地を取得した日から3年以内に、その土地に住宅を新築された場合などの条件がある。 軽減措置として不動産取得税=(固定資産税評価額×2分の1×3%)−控除額。 控除額は、(A)(B)いずれか多い額。
(A)4万5000円(税額が4万5000円未満の場合はその金額)
(B)土地1m2あたりの固定資産税評価額×住宅の床面積の2倍(200m2まで)×3%。

また、土地を所有しているとかかる税金には以下のようなものがあります。

•固定資産税(地方税)
評価額×1.4%(標準税率)。市町村によって税率が変わる。最高2.1%。 住宅用地の軽減措置  ・200m2以下の部分(小規模住宅用地)    課税標準の1/6に軽減  ・200m2超の部分(一般住宅用地)    課税標準の1/3に軽減

•都市計画税(地方税) 評価額×0.3%(標準税率)。市町村によって異なるが、最高0.3%。 住宅用地の軽減措置  ・200m2以下の部分(小規模住宅用地)    課税標準の1/3に軽減  ・200m2超の部分(一般住宅用地)    課税標準の2/3に軽減

固定資産税・都市計画税については税負担の調整措置が、商業地、住宅用地それぞれに講じられています。著しく負担水準の高い土地は課税標準が抑えられ、低い土地は引き上げられます。その基準は各自治体の条例によって若干異なります。

Q.売却時にかかる税金とは?

A.不動産を売って得た収入、「譲渡所得」とは、売却代金から取得費、売却するためにかかった費用、特別控除を差し引いた金額をいいます。 譲渡した年の1月1日において所有期間が5年を超える土地建物等を譲渡した場合は、「長期譲渡所得」、所有期間が5年以下であれば「短期譲渡所得」となり、所得税額は以下の通りとなります。

【長期譲渡所得】
・譲渡益の20%(所得税15%、住民税5%)
・個人が優良住宅地の造成等のために土地等を譲渡した場合には次の特例があります。
(平成25年12月31日まで)
イ) 譲渡益2,000万円以下の部分は14%(所得税10%、住民税4%)
ロ) 譲渡益2,000万円超の部分は20%(所得税15%、住民税5%)

・長期譲渡所得の1000万円特別控除
個人または法人が、平成21年1月1日から平成22年12月31日の2年間に土地を取得し、それを長期譲渡した場合、その譲渡益から最高1000万円を控除できます。
・土地の先行取得をした場合の課税の特例 事業者が、平成21年1月1日から平成22年12月31日の2年間に土地を取得し、その後10年以内に所有している「他の土地」を売却した場合、その譲渡益の8割(平成22年取得分は6割)を限度に圧縮記帳ができ、課税額を減額できます。

【短期譲渡所得】
・譲渡益の39%(所得税30%、住民税9%)相当額 ただし、国等に対する譲渡については、次の税額。
・譲渡益の20%(所得税15%、住民税5%)相当額

Q.相続税の納付のために、土地・建物を売却した場合の特例は?

A.相続税の納付のために土地・建物を売却した場合については、譲渡税が軽減される「相続税の取得費加算の特例」があります。 通常、不動産の譲渡税は、売却益=売却代金−(取得費+譲渡費用)に対してかかってきます。

特例は、相続税の申告書の提出期限の翌日から3年以内に売却した場合は、相続税のうち一定の金額を取得費に加算することができるというものです。 なお、相続により取得した不動産を売却した場合の「取得費」とは相続評価額ではなく、被相続人がその不動産を購入したときの取得費が引き継がれます。そして、また、所有期間についても同様に被相続人の取得日を引き継ぎますので5年超の場合は長期譲渡所得となります。 ●特例を利用した場合:売却益=売却代金−(取得費+相続税の取得費加算額+譲渡費用)

Q.所得と収入の違いは?

A.所得と収入は、つい混同してしまいますが、全く違うものです。 収入とはアパート経営で得た1年間の売上げのことです。主なものには、「家賃」「礼金」「駐車場料金」「敷金、保証金(返還する必要のない部分)」があります。 収入から、その収入を得るために使った費用(必要経費)を差し引いた利益が所得です。 つまり、収入−経費=所得、となります。

もちろん所得税は所得に対して課税されます。所得を正確に算出するためには、「収入を正確につかむこと」「必要経費を正確につかむこと」が大切になります

Q.給与所得者がアパート経営を開始したときのメリットは?

A.利点を説明すると、次のような事項を挙げることができます。

1.給与所得と不動産所得(赤字)の損益通算で所得税軽減の可能性があること
2.収入が増加すること。長期安定収入が確保できること
3.青色申告の選択で青色事業専従者給与が支払えること(事業的規模の場合)
4.青色申告の選択で純損失が発生すれば繰越し控除ができること 5.ローンの活用で相続税の圧縮が可能になること

Q.給与所得と不動産所得がある場合の申告方法は?

A.所得の大小にかかわらず確定申告はしなければなりません(給与所得や退職所得以外の所得の合計が20万円以上なら申告する義務があります)。給与分は会社がすべて計算を行っていますから、不動産収入の分について確定申告をすることになります。

ただ、所得はすべて合算して納税するのが原則ですから、申告のときに、あらためて給与分も組み入れて税額を計算し直さなければなりません。申告用紙に給与分の所得と不動産所得を記入して、源泉徴収票にある「給与所得控除後の金額」を書き移して税額を計算し直します。 当然のことながらすでに支払ってある源泉徴収税額は求めた税額から差し引いて申告します

Q.有効な節税のためには、どのような対策がありますか?

A.節税のためにも収支改善のためにも基本になるのは帳簿への正確な記録。これがあってこそ次のステップが踏み出せるというものです。まずそれを大前提にして、以下に収支決算を有利に運ぶための手段を列挙してみましょう。

1.現在白色申告であるなら、青色申告に切り換える。
2.65万円の青色申告特別控除を受けるために貸借対照表が作成できる態勢を整える。(事業的規模の場合)3.事業的規模(おおむね10戸もしくは5棟以上)のときは、青色事業専従者給与を可能な限り最大限に支給する。
4.借入金の利子の大小が不動産所得金額に大きく影響するので、ローンを有効に活用する。
5.修繕費か減価償却資産かによって、必要経費の全額が大きく異なるので対処するときに十分検討する。
6. 小規模企業共済金制度(国による退職金制度)に加入し、所得控除を受ける(従業員20人以下の小規模企業者が対象です。個人事業者も、事業的規模でなくても加入できます)。

Q.青色申告のメリットは?

A.青色申告のメリットには主に以下の3つがあります。

1. 青色事業専従者給与の必要経費算入 アパート経営が事業的規模である場合、青色申告者と生計を共にする親子や夫婦などの親族が事業に従事しているときは、その家族従業員に給与を支払うことができ、その給与を必要経費に算入することができます。
2. 青色申告特別控除 "下記の青色申告特別控除とは?"参照。
3. 純損失の繰越し控除と繰戻し ローンの返済や減価償却費の額によって所得が赤字(純損失)になった場合、損益通算によって他の所得(給与所得等)の税金を軽減することができます。この赤字は翌年以降3年間にわたって繰り越して控除することができます。また、赤字の全部または一部を前年に繰り戻して税金の還付を受けることもできます。

Q.事業的規模とは?

A.アパート経営の事業的規模とは、その経営規模がおおむね10戸(一戸建ては5棟)以上であることとされています。しかし、戸数では満たなくとも相応の規模・収入がある場合に認められることもあるため、税務署に相談されるとよいでしょう。

Q.青色申告特別控除とは?

A.不動産所得か事業所得のある人が青色申告している場合に限って、収入金額から必要経費を差し引いたあとの所得金額から、事業的規模かつ確定申告書類に貸借対照表等の決算書を添付(複式簿記採用のみ)した場合は65万円、それ以外の場合は10万円を差し引くことができます。

Q.確定申告に必要な帳簿類は?

A.確定申告をするには、年末に決算書(損益計算書)が作成できるように帳簿を整理しておかなければなりません。そのために最低限必要な帳簿は、 1.現金出納帳 2.経費帳 3.固定資産台帳 の3冊です。

決算書を作成するためには、帳簿を各月ごとに締切り、「月別集計表」を用意して収入と経費のそれぞれを記入します。このとき、減価償却費については固定資産台帳でその年の償却費を計算しておくことと、必要に応じて収入および経費の決算修正を行わなければなりません。 そして、この月別集計表をもとに、「決算書(不動産所得用)」を作成し、さらにそれに基づいて「確定申告書」を作成することになります。

また、“青色申告特別控除”制度を受けるためには、原則として複式簿記による記帳を行っている必要があります。貸借対照表を作成するには上記3冊の帳簿では不十分で、簡易簿記のままであっても「預金出納帳」「債権債務記入帳」を用意するなどの対応策が必要です。複式簿記による記帳に対応するには、会計ソフトを活用するとよいでしょう

Q.必要経費にはどんなものがあるか?

A.租税公課: 固定資産税、不動産取得税、登録免許税、印紙税、事業税など。
損害保険料: 事業に要する火災保険料の掛け金で当年度分。
修繕費: 建物、設備等の修理代金など。
減価償却費: 建物、設備のその年の減価償却分。
借入金利子: アパートの取得に要したローンの利息額など。
手数料: 宅建建物取引業者への仲介手数料など。
委託管理費: 専門業者への委託管理料。
その他: 水道光熱費、通信費、消耗品、立ち退き料、弁護士・税理士報酬など。
これ以外にも、経営の状況に応じて実際に支出する必要経費の費目を自由に設定して差し支えありません

Q.修繕費と資本的支出の違いは?

A.アパートの建物や設備の維持修理費は必要経費になります。ただし、その維持修理費が資産の価値を高めたとみなされた場合は"資本的支出"となり、全額をその年の必要経費に算入することができなくなります。

資本的支出は減価償却によって必要経費を計算します。昨今は維持修理費のコストも高くなり、判断に迷う場合もあると思いますが、最終的には税務署の判断に委ねることになります。

Q.建物の法定耐用年数は?

A.建物・設備等の固定資産は、それぞれ法定耐用年数、償却率が定められています。主なものは、以下の通りです。

資産 法定耐用年数 償却率(定額法)
木造モルタル住宅: 20年 0.050
金属造3mm以下住宅: 19年 0.053
金属造3〜4mm以下住宅: 27年 0.038
金属造4mm超住宅 :34年 0.030
鉄骨鉄筋コンクリート造住宅: 47年 0.022
給排水・ガス・照明設備: 15年 0.067
個別冷・暖房機器: 6年 0.167

Q.減価償却の計算方法とは?

A.減価償却は、固定資産ごとに税法で定められた法定耐用年数から求めた償却率を用いて金額を計算し、これを必要経費の額とすることになっています。 減価償却の方法には定率法と定額法があり、定率法を選択するには税務署への届出が必要です。

ただし、H10年4月1日以降に取得した建物については、定額法を取ることが義務づけられています。 建物と設備を一括して建物価額として減価償却費の計算をしても、建物と設備をわけて減価償却費の計算をしてもかまいません。 設備は建物よりも耐用年数が短いため、短期間で減価償却でき、当初の必要経費を多くすることができます。

H19年4月1日以降に取得する減価償却資産については、償却可能限度額の現行95%を撤廃し、1円(備忘価格)を残して全額償却できるようになりました。この改正に伴って、H19年3月31日以前に取得した減価償却資産については、償却可能限度額の95%まで償却した後の翌年から、5年間で残りの5%を均等償却することができます。

Q.減価償却の計算を間違って申告したときはどうすればいい?

A.耐用年数や償却率を間違えて申告してしまった場合、次回から正しい償却率で計算し直した数値をもとに申告してかまいません。

なお、その間違いの結果、所得税を実際より多く支払う申告になっていた場合、申告後1年以内なら、「更正の請求」を提出して税の還付を受けることができます。 逆に、所得税を実際より少なく支払う申告になっていた場合は「修正申告」をして、不足分の税金を納めることになります

Q.妻と共有で、給与所得もあるときの配偶者控除は?

A.受けられない場合と受けられる場合があります。 まず受けられない場合から説明すると、配偶者の所得(収入ではなく所得)が38万円以上になると配偶者控除の対象から外れます。

また、配偶者を事業専従者にして給与を支払ったり、事業専従者控除をした場合はその金額の大小にかかわらず控除の対象から外れてしまいます。 したがって上記以外の場合、つまり所得が38万円以下で事業専従者にしていない場合には配偶者控除が受けられることになります。

どちらが有利かはケースバイケースですが、一般論としては、給与所得が多い場合 には配偶者控除が受けられる体制の方が有利でしょう。しかしいずれにせよ、共有の場合は双方が持ち分比率に応じて収入を按分して申告するのが原則ですから、そのルールに従うのが妥当です